そしてまた、桜はさきほこる
「さきちゃん・・・」


「行かないで、先輩・・・」


振り返ると、涙をぼろぼろと流したさきちゃんが、俺をじっと見ていた。


そんな顔をされたら・・・。そんな目で見られたら・・・。


気づけば大量の涙が俺の目からこぼれ落ちていた。


あれだけ我慢するって決めたのに・・・。


「そんなこと言われたら、さきちゃんを連れていきたくなっちゃうよ・・・」


「先輩と一緒なら構わないです」


「俺もそうしたいよ?けど、さきちゃんのためにも俺のためにも、お互いに頑張らなきゃ」


「はい・・・」


「良い子だ、さきちゃん」


そうだ、どんなに辛くてもさきちゃんを連れていくことはできない。


これでいいんだ・・・。


俺たちは、顔をくしゃくしゃにしながら、ほんとうのお別れの言葉を口にする。

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