わたしの本当の王子様は、誰?


「わたしもね、何度も言おうと思ったよ。あいつから暴力をふるわれるたびに今日こそはお母さんに言おうって」

「でも、いえなかったんだな」

「うん。お母さんの笑った顔みちゃうといえなかった。お母さんの笑ってる顔が大好きだから。悲しませたくなかった」


子供の思い。

それはどうやったら親に伝わるんだろうか。

やっぱり言葉にしないと伝わらないんだろうか。



「それにさ、なんでかわかんないんだけど、お母さんといるときのあいつは平気なの。あいつと2人きりのときは怖くて仕方ないのに、お母さんといるときのあいつとは普通に会話もできるの。おかしいよね。こんなにもひどいことされてるのに。実の父でもないのに。結局嫌いにはなれないんだよね、わたしも」


人を嫌いになるのも、簡単にみえて簡単じゃない。


違う一面をみたら、優しさを知ってしまったらなおさら。


嫌いと思う気持ちと同じくらいに、なぜかわからないけど好きという感情もうまれる。


人間の心ってとても不思議だ。

< 119 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop