もっと秘密なラヴシークレットルーム 日詠医師の溺愛ぶりは糖度高めで要注意?!




「専門性の高い手の外科の世界に身を置いている俺は、新しくて効果があるという手術方法や縫合方法は常にアンテナを張っている。後療法(リハビリ)も同様。手の外科の後療法ができるハンドセラピスト(リハビリ療法士)も全国的に少ないから、俺は国内留学して、そこのハンドセラピストからリハビリを直伝してもらって、ウチのハンドセラピストを一から育てた。それでここ最近ようやく、ウチの病院でも手の外科の手術から後療法(リハビリ)までトータルで治せるようになったんだ。」

『それで、松浦さんのような優秀なハンドセラピストがいるんだな。』

「レイナもお世話になっただろ?」

『そうだったな。』



いつもはおちゃらけることがほとんどの森村の、手の外科医師としてのフットワークの良さには驚いた。
彼の上司である矢野先生が彼に対し絶対的な信頼を置いているのもよくわかる。




「そんなレイナは更に未来に向かって歩き始めた。だから日詠さんも、今からなんじゃないですか?」

『・・・今から・・か・・・』

「そう。スキな女が前向きに歩き始めたんだ。それをただ指を咥えてみているだけの男ですか?妊婦だったレイナを東京へ送るしかなかった時のように、同じことを繰り返すんですか?日詠さんは。」




そんな彼だから歯がゆいんだろう
自分が惚れた女の婚約者だった男である俺が努力もしないで、その場で足踏みしている姿が・・・
いつもの調子づいた口調なんかではなく、俺を諭すように語り掛ける森村の歯がゆさが俺の耳にも雪崩れ込んでくる。



『・・・変わりたい。頑張っているスキな女に向かって胸が張れるように。』

「じゃあ、そうするためには、指を咥えて見ているだけの男よりも、治療技術の盗人男になるべき。俺みたいに。」


いつもはむかつく言動を俺に仕向ける男からのその言葉。
嫉妬対象になったぐらいの能力がある男だからこそ、心が動かずにはいられない。
悔しいけれど、森村から発せられた”盗人男になるべき”一択に同意した俺は
思い切って上司に業務調整を依頼し、国内短期留学をすることにした。



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