【短編】M e m o r y




─美が来るまで、ずっと待ってるから。


その言葉は嘘だったの?





ねえ。


何で今日、私に電話してきたの?

何で今まで、連絡してこなかったの?

何で今更、待ってるなんて言うの?


何で……今ここにいないの?




優馬はいっつもそうだよ。

勝手に言って、勝手に何処かいなくなる。





私がどれだけ悲しくて、寂しくて、泣きたくなる思いをしたかわかってるの?




自分勝手だよ、優馬。







――――…



『ねえ、優馬。何で麻生徹平って名前なのに優馬ってあだ名なの?』



『え?僕? このあだ名…美ちゃんが付けたんじゃん!』


『えー!? 私?知らないよ!』



『もう…美ちゃんはいつもそうなんだから困るよ、本当。
優馬ってあだ名はね、美ちゃん曰く「優しくて馬鹿」の略らしいよ?』



『優しくて馬鹿?そのまんまじゃん!』



『……ぶっ。付けた本人が忘れてどうするの!美ちゃんの方が馬鹿だよ』


『ひっ…ひどーい!馬鹿優馬っ』



――――…




あぁ、そうだった。


優馬ってあだ名は
『優しくて馬鹿』って意味だったね。



いつも勝手にいなくなるのは、優馬なりの優しさだったの?

私が泣かないように?




でもそれは違うよ。

勝手にいなくなっても私は泣くよ?


勘違いして、1人にしないでよ…。




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