【短編】M e m o r y
後ろを振り返り、
開いた扉の前に立っていたのは。
「………美、久しぶり」
待ち焦がれた、愛しい王子様。
「……優…馬?」
静かな教会の中は、声が響く。
日は完全に暮れて辺りは真っ暗だけれど、
十字架にはろうそくが灯っていたので私の周りは一応明るい。
だけど優馬の後ろは扉が開いたままだから外。
あえて月明かりが見えるだけ。
優馬だと判断したのは、声で。
携帯越しに聞こえた声と同じ。同じだけど今いるのは本物、なんだ。
「…優馬ぁっ……!」
立ち上がって、優馬の方へと走る。
会いたかったよ、ずっと。
待ってたんだよ、ずっと。
大好きだったんだよ……ずっと。
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