【短編】M e m o r y
力任せに優馬に抱きついた。
「…優馬……、会いたかったよ…」
そう言って、抱きついた手に力を入れて、優馬の服をぎゅっと掴んだ。
もう離れないように。
もう何処かへ行かないように。
けれど、ぎゅっと掴んだはずの手は、優馬の手によって簡単に外されてしまったんだ。
「……どうして?」
瞳に涙をたくさん溜めながら私は言った。
どうして簡単に外すの…?
せっかく会えたんだよ。
もっと抱き締めていたいよ。
涙を流すとなんだか負けたような気がして。
ぐっと瞳に力を入れて堪えた。
一息置いて、
優馬がゆっくりと話し始めた。
「美……久しぶり。会いたかったよ。……ずっと」
なんでなのかな。
優馬の言葉には、棘がないよね。
だからすんなりと心に染みてく。
そんな感じがするんだ。
「私も。会いたかった」
そう言いたかったけど、無理だった。
……唇を、塞がれて。
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