羽を失くした天使 ~祐一の場合

ゼネコンに就職して 6年目。

施工管理の仕事は 下請けとの関係が大切。


なるべく 下請けに 顔をだして

信頼を 深めようと 思っている。


「進藤君 年 いくつ?」

キンキンに冷えた 事務所で ホットコーヒーを出されて。

「今年で28才になります。」

「へえ。若く見えるわね。結婚は?」

「まだ全然。なかなか 縁がなくて。」

俺は 笑って答えた。


「そうなの?良い子なのに。もったいないわね。」

” 良い子 ” って言われて 俺は 苦笑する。

30才近い オッサンなのに…


離婚して 実家に戻って 家業を継いだ社長。

荒くれの 作業員達を 束ねて。


ぽっちゃりした 普通の おばさんだけど。

きっと 見えない苦労が あるんだろうなぁ。


そんな風に思って 社長を しみじみ 見てしまう。


「進藤君ってさ。悩みとか あるの?」

社長は 急に 真面目な顔になる。


「悩み?そりゃ ありますよ。給料が安いとか。休みが少ないとか。」

「そういうことじゃなくてさ。」


社長の 見透かすような目に 射すくめられて。

一瞬 俺は 無言になってしまう。





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