羽を失くした天使 ~祐一の場合
麻里絵を 送った足で そのまま バイトに入って。
「祐一。麻里絵ちゃんいなくて 寂しいだろう。」
栄太さんに からかわれて。
「別に 寂しくないですよ。」
苦笑したけれど。
バイトが終わって 帰る時も
いつも 麻里絵と一緒だったから。
「お疲れ様。」
と栄太さん達と 別れて 。
いつも麻里絵がいる 左側が 心許なくて。
「あの。祐一君ですよね。」
歩き出してすぐに 後ろから 声をかけられた。
立ち止って 振り返ると 知らない女の子が 頭を下げる。
「はい。なにか?」
「私 麻里絵の友達の 千佳です。一度 会ったことあるんだけど。覚えてないかなぁ。」
その子は 上目使いに 俺を見る。
千佳という名前は 麻里絵から 聞いたことがあるけど。
もう1年くらい前に 麻里絵の友達が
バイト先に 来たことがあった。
麻里絵と 付き合い始めて まもなくの頃。
その時 俺は 麻里絵に呼ばれて 挨拶した。
あの 4、5人の 女の子の1人?
実際 顔なんて 覚えてないし。
今だって 暗くて よく見えないし。
「麻里絵のことで 大事な話しが あるんです。少し 時間もらえますか?」