羽を失くした天使 ~祐一の場合
俺は 千佳を引きずるように アパートに入れた。
千佳は ほとんど 意識がないような状態で。
全く しょうがないなぁ。
飲めもしないのに 飲むから。
俺が 放って帰ったら どうするんだよ。
俺は 千佳を床に 横たえて 自分は ベッドに入った。
翌日は 午後から バイトだし。
バイトで 疲れていた俺は そのまま 眠ってしまった。
「えっ。ここ どこ?」
驚いたような 千佳の声に 目を覚まして。
ベッドの上に 起き上がると
千佳は ぼんやりした顔で 俺を見た。
「祐一君?」
「あんなに酔って。俺が 置いて帰ったら どうするつもりだったの?」
俺は ベッドを降りて 水を汲んできた。
「ごめんなさい。」
千佳は 一気に 水を飲み干す。
「まだ2時か。電車 走ってないなぁ。タクシー拾って帰る?」
「ごめんなさい。迷惑かけて。」
千佳は シクシクと 泣き出した。
「別にいいよ。泣くなよ。」
「でも。私 ずっと 祐一君が 好きだったから。初めて 会った時から ずっと。麻里絵の話し 聞くたび 辛くて。羨ましくて。」
急に 千佳に言われて 驚いて。
何も言えずに 千佳の顔を見る。
千佳は 立ち上がると
突然 俺に 抱きついた。