羽を失くした天使 ~祐一の場合

「止めろよ。落ち着けよ。」

千佳は 泣きながら 俺に しがみつく。

もちろん 拒否するつもりだったけど。


「今日だけでいいの。お願いだから。今夜だけ 私と一緒にいて。」


強く 抱きついてくる千佳を

いつしか 俺は 抱きとめていた。


「祐一君。好きなの。本当に 好きなの。」


俺は そのまま 千佳を 抱いてしまった。



千佳の行動は 全部 演技だったかもしれない。

酔った振りも 意識を失った振りも。


後から 思っても 遅いけど。


抱いてしまった俺には

隙があったのだと思う。


慣れすぎた 麻里絵との関係は 幸せで。

壊れることなんて 絶対にないと思ってた。


心の余裕に 千佳は 付け込んだ。


千佳に 付け込む隙を 俺は 与えてしまった。




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