羽を失くした天使 ~祐一の場合

「進藤君 ウチに来るようになって 何年?」

「かれこれ 3年くらい 経ちますね。」

「そうよね。最初は 可愛いお兄ちゃんでさ。こんな 優男が 現場に出て 大丈夫って思ったけど。」

「優男?俺 ナヨナヨしてますか?」

「そうじゃないけど。優しい顔してるじゃない。よく言われない?」

社長は 暇なのか 楽しそうに 話し続ける。


俺も 今日は 休日で これで仕事は 終りだから。

社長の話しに 付き合っても 大丈夫。


「そんなこと 言われないですよ。俺 こう見えて 性格 悪いですから。」

俺は 冗談半分で 笑いながら 言ったのに。

「ねぇ。進藤君 過去に なんかあった?」


この女社長 透視ができるのか?

そういう能力で ガラの悪い 作業員達を 黙らせているとか。


笑って誤魔化そうとしたけど。

ハッとした隙に 一瞬 真顔になった俺。


「ねぇ。話してみてよ。私 そういう話し聞くの 好きなのよねぇ。」

社長は 立ち上がって コーヒーのおかわりを 注いでくれる。


「長い話しになりますよ。社長 お時間は 大丈夫ですか?」

笑いながら言う俺に 社長は頷く。

社長に 話す気になったのは 

ほんの 気まぐれだったけど。


多分 社長の 包容力と安心感のせい。

これが 会社を安定させている 理由かもしれない。


でも 俺自身 そろそろ 解放されたかったのだと思う。


言葉にすることで 心が整理できるから。





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