羽を失くした天使 ~祐一の場合
社長が 注文したかつ丼は 3つ。
「瑞希。かつ丼 来たから。事務所まで 取りにおいで。」
社長は 家に電話をかけた。
社長は 事務所の裏に 立派な自宅がある。
「娘が 大学生なんだけど。夏休みで ウダウダしてるのよ。」
そう言って 俺に かつ丼を 進める社長。
俺は 遠慮なく 箸をとる。
「うわっ。ここ 寒い。」
そう言って 事務所に入ってきた 社長の娘さん。
そこで かつ丼を 食べている俺に 驚く。
「あっ。お邪魔してます。」
立ち上がって 頭を下げる俺に
「進藤君よ。ゼネコンの。」
「どうも。瑞希です。」
社長に あまり似ていない スレンダーな少女。
ハーフパンツからは 眩しいほど 長い脚を のぞかせて。
「社長。綺麗なお嬢さんですね。あまり 社長に 似てないですね。」
つい 言ってしまった俺に 娘さんは 笑う。
「綺麗で 私に 似てないって。どういうことよ。進藤君。」
ムッとした顔で 社長は 俺を睨んだ。