羽を失くした天使 ~祐一の場合

「どこか 行きたい所 ある?」

「うーん。別にないかな。進藤さんに 任せるよ。」

「どこ行っても 暑いからなぁ。そうだ。水族館でも 行ってみる?」

「水族館って。デートみたいじゃん?」

「いいんじゃない?瑞希ちゃんは 困る?」

「別に。いいけど。子ども扱い しないでよ。誘ったのは 進藤さんなんだからね。」


最初は 敬語だったのに。

瑞希ちゃんは くだけた口調になっていて。


社長に 知れたら 怒られるだろうと 思いながら。

俺は 久しぶりに 胸が 弾んでいた。


「ねぇ。進藤さん。いつから 彼女 いないの?」

「20才の時。もう 8年くらい 彼女いないんだ。」

「えー。嘘でしょう?超寂しいじゃん?」

「そうでもないよ。1人は 気楽でいいよ。」

「モテない人は そう言うんだよ。恋人なんか ほしくないって。」

瑞希ちゃんの話しは 楽しくて。

俺は 声を上げて 笑ってしまう。


「瑞希ちゃんは?いつから 彼がいないの?」


俺が お返しの質問をすると

一瞬 瑞希ちゃんの目が 泳ぐ。


「えっ。私は ついこの間まで いたよ。」


もしかして この子は 恋愛をしたことがない?

例えば 両親のことが トラウマになっているとか?


「そっか。瑞希ちゃんの方が 経験豊富なのかも。色々 教えてよ。恋愛の仕方とかさ。」

強がる 瑞希ちゃんが 可笑しくて。

俺が 一歩 引くと


「いいよ。じゃ 私が 進藤さんの レッスンをしてあげるよ。」

瑞希ちゃんは 困った表情を 強がりで隠す。


「お願いします。師匠。」



さっき 社長に話したことで

まるで魔法にかかったように 

俺は 変わっていた。





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