羽を失くした天使 ~祐一の場合

瑞希の 学校が始まると 俺達は 平日の夜も 会った。


俺が 早く 上がれる日

学校帰りの 瑞希は 俺を待つ。


一緒に 夕食を食べて 瑞希を 送るだけでも。

俺は 少しでも 瑞希と 一緒にいたかった。


瑞希が どんな気持ちなのか。

不安では あったけど。


俺は 瑞希から 確かな好意を 感じていたから。


「来月は 文化祭なんだ。」

「へぇ。懐かしいなぁ。瑞希 なんかするの?」

「ううん。私は サークル入ってないから。全然 関係ないよ。」

「そうなの?つまんないね。」

「でも 文化祭の間は 学校 休みだから。旅行する子とかも いるよ。」

「大学生なんて いつでも旅行できるじゃない?」

「まぁ そうなんだけどね。」


瑞希から 旅行と 言ってきたから。


「俺も 旅行なんて しばらくしてないなぁ。」

「へぇ。祐一さん 大人なのに。あっ そうか。ずっと 彼女 いなかったからね。」

瑞希の言葉に 俺は 乗ってみる。

「うん。1人で行っても つまんないし。せっかくだから 俺も 旅行しようかな。」

「えっ?私と?」

瑞希の目に 不安がよぎる。

「瑞希の 文化祭に合わせて。瑞希は いや?」

「イヤじゃないけど…」


まだ 手も 繋いでない2人。

瑞希の 躊躇いは よくわかる。


食事を終えて 車まで 歩きながら

俺は そっと 瑞希の手を 握った。


瑞希は ハッとして 俺を見た後で 

そっと 俺の手を 握り返した。






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