羽を失くした天使 ~祐一の場合
大学生になって 初めてのテストが終わって。
夏休みになってすぐ 俺は 麻里絵ちゃんに 告白した。
試験が始まる前 バイトの先輩の 栄太さんに
「祐一 麻里絵ちゃんのこと 好きなの?」
って聞かれて。
「えっ。栄太さん 何で 知ってるんですか?」
と 間抜けな返事をした俺。
栄太さんは ケラケラ笑って言う。
「祐一 わかり易いもん。しょっちゅう 麻里絵ちゃんのこと 見てるだろ?」
確かに 俺は しょっちゅう 麻里絵ちゃんを見ていた。
麻里絵ちゃんがいると その姿を つい追ってしまう。
「早く 告白しろよ。大丈夫。麻里絵ちゃんも 祐一のこと 気になっているから。」
栄太さんは そう言ってくれたけど。
試験が 始まる頃から
麻里絵ちゃんが 急によそよそしくなる。
俺 麻里絵ちゃんに 何かしたか?
いくら考えても 思いつかなくて。
いつもと同じように 接していたつもりだったから。
麻里絵ちゃんが 気になって
試験にも 集中できなくなっていた。