電話のあなたは存じておりません!
「ってか、来栖商事って言えば副社長がもの凄いイケメンなのよー。アラサーの二十八歳! はぁ〜、付き合いたい!」

「そうそう、てかそんな殿上人と縁有ったら玉の輿確定よねー。ねぇ、由佳。そういうセレブ合コンはやっぱ無理なの??」

 最早私の話などそっちのけで、二人は最高の"物件探し"に夢中になる。因みに二人とも彼氏ありでこの調子だ。

「ねぇ、朱音は見た事ある? 来栖副社長。イケメンオーラが凄いのよ」

 ーーイケメンオーラって。

「どうかな。見たとしてもあんまり覚えてないかも」

 イケメンだからと言って、興味を示さないのが私なので、由佳は肩をすくめた。

「相変わらず朱音はクールねぇ〜」

 ーー別に普通だと思うけど。

「で? その電話の男って朱音のストーカー?」

「さぁ?」

 本人は違うと言ってるけど、と思いつつ発言はスルーする。

 何にせよ、名無しの権兵衛だったクルスさんは元カレにあけられた心の穴を埋める為の要員だ。

 私は勝手にそう決め付けていた。

「来栖商事の社員なら別だけど、あんまり変な人と関わるのやめなよー?」

「そうそう。警察沙汰になったら大変だし」

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