電話のあなたは存じておりません!
「……うん。そうだね」
私もそろそろ現実に帰って来なければいけない。
そう思うのに、今夜も私はスマホを手に時計の針が八時半になるのを待っていた。
知らず知らず、クルスさんからの電話を待ち望んでいたのだ。
多分、この時点で麻痺していたのかもしれない。
不審者か好きになりかけている人かの判断がつかなくなっていた。
八時半を過ぎ、スマホが鳴った。ディスプレイは【権兵衛のクルスさん】だ。
『あ、芹澤さんですか?』
「はい、そうですよ。今晩は」
続けて「お疲れ様です」と挨拶を口にする。
私はベッドの側面にもたれて座りながら、今日由佳たちとした会話を思い出していた。
「……あの。クルスさんは、来栖商事の社員さんですか?」
『えっ』
脈絡もなく聞いたせいか、彼が頓狂な声を上げる。
「そもそもフルネームを聞いて無いので、教えて貰えませんか?」
耳に当てたスマホを握りしめ、クルスさんの返事を待った。
『さすが芹澤さん。優等生のキミは今でも健在だね?』
「え、じゃあ……」
『察しの通り、僕は来栖商事の社員だ。ただフルネームは答えたくない』
「え……」
ーーなんで?
私もそろそろ現実に帰って来なければいけない。
そう思うのに、今夜も私はスマホを手に時計の針が八時半になるのを待っていた。
知らず知らず、クルスさんからの電話を待ち望んでいたのだ。
多分、この時点で麻痺していたのかもしれない。
不審者か好きになりかけている人かの判断がつかなくなっていた。
八時半を過ぎ、スマホが鳴った。ディスプレイは【権兵衛のクルスさん】だ。
『あ、芹澤さんですか?』
「はい、そうですよ。今晩は」
続けて「お疲れ様です」と挨拶を口にする。
私はベッドの側面にもたれて座りながら、今日由佳たちとした会話を思い出していた。
「……あの。クルスさんは、来栖商事の社員さんですか?」
『えっ』
脈絡もなく聞いたせいか、彼が頓狂な声を上げる。
「そもそもフルネームを聞いて無いので、教えて貰えませんか?」
耳に当てたスマホを握りしめ、クルスさんの返事を待った。
『さすが芹澤さん。優等生のキミは今でも健在だね?』
「え、じゃあ……」
『察しの通り、僕は来栖商事の社員だ。ただフルネームは答えたくない』
「え……」
ーーなんで?