電話のあなたは存じておりません!
「芹澤さん、今夜予定は?」
「と、特に……これと言っては」
「じゃあ食事に誘っても?」
「……あ、はい」
電話を通した声ではない、生の声が気持ちをふわふわと浮つかせる。一度大きく打った心臓は、太鼓のように尚も私の内部で鳴り響いている。
「悪いが今夜の父との会食、パスと伝えておいてくれ」
「え、それは…幾ら何でも副社長…っ」
「大丈夫だから」
急な予定変更に動揺する秘書さんを宥め、彼はエレベーターの上行きボタンを押した。
「それじゃあ芹澤さん、連絡待ってるから」
「……はい」
程なくしてエレベーターが開く。
「ご案内致します」と笑顔で言いつつも、由佳が私に目で物申していた。後で説明しなさいよ、と安易に告げていた。
三人が乗り込み、銀色の扉が閉まった。
「ちょ、ちょっと朱音ちゃんっ! 今の、なに??」
受付から出てきた沙奈江が興奮して詰め寄るが、私は放心したままで暫くは何も言えなかった。
「と、特に……これと言っては」
「じゃあ食事に誘っても?」
「……あ、はい」
電話を通した声ではない、生の声が気持ちをふわふわと浮つかせる。一度大きく打った心臓は、太鼓のように尚も私の内部で鳴り響いている。
「悪いが今夜の父との会食、パスと伝えておいてくれ」
「え、それは…幾ら何でも副社長…っ」
「大丈夫だから」
急な予定変更に動揺する秘書さんを宥め、彼はエレベーターの上行きボタンを押した。
「それじゃあ芹澤さん、連絡待ってるから」
「……はい」
程なくしてエレベーターが開く。
「ご案内致します」と笑顔で言いつつも、由佳が私に目で物申していた。後で説明しなさいよ、と安易に告げていた。
三人が乗り込み、銀色の扉が閉まった。
「ちょ、ちょっと朱音ちゃんっ! 今の、なに??」
受付から出てきた沙奈江が興奮して詰め寄るが、私は放心したままで暫くは何も言えなかった。