電話のあなたは存じておりません!
 そもそも電話帳登録をした際に、番号を打ち間違えているからではないか? だから私にかかって来るのでは?

 喉元まで出かけるが、私は無言を貫いた。

『すみません、間違えました』

 そう言って電話が切られるのを待つ。

 ーー誰かは分からないけど、早く佐藤さんに繋がりますように。

 しかしその祈りも虚しく、五分後、また同じ番号で掛かってきた。

「はい」と答えて回線を繋いだ。

『あの。さと、』

「佐藤さんじゃ無いですよー」

 今度は一方的に告げてこっちから電話を切った。

 駄目だ、こりゃ。

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