電話のあなたは存じておりません!
2.Who are you?

 間違い電話は翌日も掛かってきた。昨夜同様の、午後八時半だ。

 下四桁の番号を見て、間違い男だと分かりつつ「はい」と答えた。

『あの』

「私は佐藤さんじゃないです、間違いですよ?」

 出来るだけ丁寧に伝えて、一方的に電話を切った。

 しかしながら数秒の間を置き、また掛かってきた。もう迷惑電話としか思えない。

「はい」

『あ。何度も間違えて掛けてしまってすみません。
 申し訳なくてお詫びを言いたくて、これはあなた宛に掛けました。間違いじゃありません』

「あ。そうなんですか?」

 ーー単なる暇つぶし、だろうか?

 そう思う私も、何となく暇で話してしまう。

 傷付いた心の隙間を何かで埋めたかったのかもしれないが、単なる気まぐれを起こしたというのが一番しっくりくる。

 見ず知らずの人は、私にとっては非現実な相手だ。現実逃避をするには丁度良い。

 もはやスマホを持つのが面倒になり、ベッドに寝転びながらハンズフリーで会話する。

「て言うか、もう佐藤さんへの電話は大丈夫なんですか?」

『あ、はい。問題は解決してますので、お気遣いなく』

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