続・電話のあなたは存じておりません!
After That.1.
彼と交際して間もなくの頃は、どちらかと言えば私の方に分があった。
私と結婚したい、と。
どこまで本気か分からない瞳でプロポーズしてくれる彼に、私は最低半年はじっくり考えようと思っていた。
来栖さんに限って無いとは思ったが、婚約した矢先に破棄されたら、まず間違いなく私は男性不振に陥るだろう。
和希の二の舞になれば二度と立ち直れないような気がした。
付き合ってすぐの頃は毎日のようにデートに誘われたし、マメにメッセージのやり取りもした。当然、電話は毎夜、欠かさずに掛かってきた。
彼は思っていた以上に情熱的な人だった。
来栖商事の副社長として何年ぶりかで再会した夜。
来栖さんは運転手付きの車で出迎えてくれたはずだが、その次に会った時は彼専用の自家用車で迎えに来られた。
「デートはやっぱり、二人きりでしないとね?」
そう言って彼は私に甘い笑みを向ける。
私が彼の外見の魅力にハマるのに、そう時間は掛からなかった。
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