続・電話のあなたは存じておりません!
 そう思った時、ごく自然な疑問がわいた。

 私は或叶さんの、どこまでを知っているのだろう?

「あ。芹澤さん」

「はい」

 自宅マンション手前の駐車場へ辿り着き、シートベルトを外した所で彼に呼び止められた。

「六月二十日、土曜日なんだけど。できれば空けておいてくれる?」

 ーーあ……。

「はい。それは勿論っ、大丈夫です」

 嬉しくなって、私は笑顔で答えた。その反応を見て、彼が笑みを残したまま「うん?」と首を傾げる。

「来栖さんのお誕生日ですよね? 私、一緒に過ごしたいと思ってたんです」

「そっか。ありがとう」

 そう言って彼は滑らかな指先で私の頬を撫で、スッとこめかみ辺りの髪から差し入れた。

 僅かに目を伏せた或叶さんが、顔を傾け、私の唇を食むように吸ってくる。

 ーーあ。

 これは一番深いやつだと理解して、私は喜びからまつげを震わせる。

 彼の温かな舌が私の口内を探索し、歯列をなぞってから舌を絡め取られる。貪るように唇を吸われて、私は彼に抱きすくめられた。

 ーー気持ちいい……。

 コクンと喉を上下させて、私は彼と唾液を交換する。

 トロンと恍惚を帯びた瞳で彼を見つめると、彼はどこか意地悪く笑い、親指のハラで私の唇を拭った。

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