続・電話のあなたは存じておりません!
「おやすみ」

「おやすみなさい…」

 助手席から降りて、私は彼の高級セダン車を見送った。

 はぁ、と幸せな気分で吐息をもらし、エントランスに足を向けた。

 ーーえ……?

 ガラス戸手前の植え込みに誰か座ってる?

 まじまじと見つめると、和希だった。

「え、かず、き……? どうしてここに?」

 和希は無愛想な顔で立ち上がり、私へと近付いた。

「お前いつの間に或叶と?」

「……え」

 今のキスを見られていたと理解して、瞬時に頬が熱くなる。

 私は肩に掛けた鞄の持ち手をギュッと握りしめて、和希から顔を背けた。

 赤くなった私の顔を覗き込みながら、彼が面白くなさそうにボヤく。

「……はっ、スーパーエリートには、鉄壁の朱音もイチコロってか?」

「……な、なにそれ、意味分かんないんだけど?」

 和希は私を見たままで何も言わなかった。

 て言うか、そもそも何でここに居るのだろう?

 一度聞いた問いなので再度声にする事はなく、私は強がって言った。

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