続・電話のあなたは存じておりません!
 化粧の時、鬱血の跡にファンデを出来るだけ厚めに塗って、目立たなくする。

 場所が場所なので出勤時はスカーフを巻いて家を出た。

 しかしながら制服に着替えた時、それが露わになったので、出来るだけ髪の毛を首元に寄せて隠そうと試みる。

 由佳や沙奈江は気付いていたかもしれないが、それを或叶さんの仕業だと思い込んだのか何も聞いてこなかった。

 夜は或叶さんと会う約束をしている。私服だからスカーフを巻いたら見られる事はない。

 要は、仕事中の今に、彼の来客さえなければいいのだ。

 私は変な緊張感でドキドキしながら午前中を過ごした。

 午後になり、どういう訳か、或叶さんが一人きりで真島物産へ訪れた。

 ーーなんで……?

 ドキンと鼓動が打ち、私は後ろ暗い気持ちに満たされた。言うまでもなく、或叶さんは私の前で足を止めた。

「い、いらっしゃいませ」

 私は立ち上がり、俯き加減にお辞儀をした。

「今日は……お一人なんですか?」

 いつもの秘書さんが居ないのを不思議に思って尋ねると、彼は穏やかに目を細め、「ああ」と頷く。

「必要無いから置いてきた。芹澤さん、谷崎専務につないでくれるかな? 急用なんだ」
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