続・電話のあなたは存じておりません!
「か、畏まりました」

 私は再び椅子に座り、内線を掛けた。

 さっきから或叶さんの視線がビシビシと首筋に集中しているように感じるけど、気のせい……?

 一瞬、不安に眉を寄せるが、すぐに営業スマイルで応対する。

「二十五階の第一会議室になります」

「そう、それじゃあ案内してくれる?」

「あ、はい」

 明らかに挙動不審な私を見て、由佳と沙奈江が妙な顔をする。「どうしたの?」とコソッと尋ねられた。

 問いに答える事が出来ず、私は曖昧に笑ってから首を振り、或叶さんと並んでエレベーターホールへと向かう。

 私は手櫛で髪を首筋に寄せ、俯き加減で立っていた。彼は何も言わなかった。

 ポン、と聞き慣れた音がして、銀色の扉が開き、私は彼とその箱に乗り込んだ。

「ところで芹澤さん、それどうしたの?」

「えっ?」

 私はやはり挙動不審に笑い、首を傾げた。

「ほら、ここ。赤くなってる」

 彼の指が私の髪を払いのけ、的確にそれを撫でた。カァ、と頬が熱くなる。

 ファンデを厚塗りしてきたけれど、あまり意味が無かったようだ。

 私は曖昧な手付きで、そこを押さえた。

「これは、その……。寝ている間に。へ、変な虫に刺されたみたいで」

「ふぅん? 窓でも開けて寝てたの?」
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