続・電話のあなたは存じておりません!
After That.2.
急にデートの予定が無くなって、私は意気消沈したまま五階の受付へと降りた。
これがキスマークだって、絶対にバレた。
昨日の今日でこんな跡を付けているなんて、或叶さんに不信感を持たれたかもしれない。
ーーどうしよう……?
これは和希に待ち伏せされて、無理やり付けられたって言ってしまうべき……?
でもそうしたら何で今さら元カレと会ってるんだって問い詰められるかもしれない。
ーー或叶さんに嫌われちゃう……。
私は暗い気持ちを引きずったまま、業務に勤しんだ。
これまでの恋愛では、私はそこまで彼氏の事に気持ちを振り回される性格ではなかった。
らしくない、とまた思った。
「朱音さ、或叶様と何かあった……?」
仕事中こそ周りの目を気にして聞くのを躊躇っていたが、ロッカールームで着替えている時、由佳と沙奈江が気遣って尋ねた。
「何か……」
ポツリと呟き、私は曖昧に首を振る。
別に彼と何かがあった訳ではない。昨日だってデートして、帰り際に深いキスをしてラブラブだったはずだ。
ただ、和希に無理やり付けられたキスマークが私を酷く動揺させただけで。
「あのね……」