続・電話のあなたは存じておりません!
「元カレ事情とかさ、色々複雑だと思うけど。一旦わきに置いて、朱音は先の事考えた方がいいんじゃない?」

「……先?」

 話が見えなくて、私は首を傾げる。

「そ。あと二週間ぐらいで彼の誕生日なんでしょ? プレゼントは? 用意したの?」

「……あぁ、まだ」

 確かに、あと十五日で或叶さんの誕生日だ。昨夜空けておいてと言われたばかりなのに、すっかりと頭から抜け落ちていた。

 ーーって言うか。プレゼントって何を贈ればいいんだろ?

 私はカシスソーダの入ったグラスを持ち上げ、眉を寄せた。

 私は。彼を知っているようで全く知らない。

 彼は私の趣味嗜好を理解しているのに、私は彼が今何を一番望んでいるのか例にも挙げられない。

 或叶さんが欲しいものって何だろう?

「また百面相ね?」

 向かいに座った由佳が呆れて首を振る。

「或叶さんに……何を贈ればいいか分からなくて」

「そんなの何だって良いわよ、メンズが喜びそうなのリサーチして買いに行きな? 朱音が渡せば何でも喜んでくれるでしょ?」

「……うーん」

 言いながら唇を尖らせ、首を捻った。

「朱音」
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