続・電話のあなたは存じておりません!
 唇を包む熱はどこまでも甘く、私の意識をふわふわと浮つかせた。

 彼のキスには三段階あった。

 一段階目はついばむように、チュ、と軽く音を鳴らすだけのキス。

 かと思えば、二段階目では唇を甘く吸われる重厚なキスを、少し長めにされる。

 そして、三段階目は、その日の気分で舌を入れられるディープキス。私の舌を執拗に絡めとって吸われ、深いキスをお見舞いされる。

 来栖さんはどこか慣れているのか、私にキスするのに全く躊躇いがない。

「ところで芹澤さんは。どのぐらい俺を好きになってくれた?」

 付き合って三週間が経った頃、デート帰りの車内でそんな質問を受けた。

「……分かりません」

「ふぅん、そっか」

 来栖さんは目を細めて笑い、私のマンションへと車を走らせる。

「どのぐらい、とか。分からないぐらい……あなたに夢中だと思います」

 私は膝上で鞄を握り締めながら、しおらしく答えた。

 私らしくない、と。何となくだが、そう感じた。

「……そう。それはいい傾向だね」

 来栖さんは信号待ちの交差点で減速し、私を横目に捉えた。

「それじゃあ……。まだもうちょっとだけ煮詰めないとね?」

 ーーえ。
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