続・電話のあなたは存じておりません!
 きっと嫌な記憶として一括りにしていたから、こんな大事な事も忘れていたんだ。

「バカだな、私。ほんと呆れる」

 パタンと日記帳を閉じて、私はそれをギュウッと抱きしめた。

 ーーでも、或叶さんは覚えていた。

 私が真面目に委員長の仕事をしていた事も、勉強を頑張っていた事も、好きな音楽も、友達関係や男の子についての悩みも、ネットで叩かれていた事も、全部。

 覚えていて、電話を掛けてくれた。

 若い頃の、どこか頼りなく可愛い彼を思い出しクスッと笑みがもれる。

 一生徒の悩みに親身になってくれて、頭の良い彼はやっぱり素敵だと思った。

 素敵で、大好きな彼氏だ。

 私は彼の事が綴られた日記帳を、持ってきた鞄にそっと仕舞う。

 そのあと階下に降りて、母と昼食をとり、自宅への帰路を辿った。

 *

 翌日の日曜日。

 或叶さんへのプレゼントを買いに、一人でショッピングモールへ出掛けた。

 何を買おうかってずっと迷っていたけれど、UVカットの付いた伊達眼鏡、またはサングラスを買おうと思った。

 これからの時期は日差しがキツくなるから、運転時にはきっと必要になる。
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