続・電話のあなたは存じておりません!
 彼の意図する所が分からず、私はドギマギと視線を右往左往に漂わせた。

 そういうあなたはどうなんだろう?

 至極当たり前な疑問が湧いて、自宅マンションへと辿り着いてから思い切って尋ねる事にした。

「あの。来栖さんは……私の事、どのぐらい好きですか?」

 彼は少し驚いたような顔をし、私をジッと見つめた。

「うん……、そうだね」

 私は握りしめる鞄の持ち手と彼を、交互に見つめながら、返事を待った。

「言葉で伝えるのは難しいから、また今度。じっくりと教えてあげる」

 ーーえ。

「そんなの、ズルいです」

 私はちゃんと答えたのに。

「そう?」

 彼は悪びれる事なく、優しく笑う。

「あ、芹澤さん」

 おやすみなさい、と言って、助手席のシートベルトを外した所で、彼の顔が眼前に迫った。

 唇に温かな感触を受けて、二段階めのキスをされる。彼の香りが心地いい。

「おやすみ」

 そう言って頭を撫でられた。

「おやすみ、なさい」

 火照った顔で自室を開けて、ベッドに体を放り出す。来栖さんとの甘い記憶を反芻するのがこの頃の日課だ。
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