続・電話のあなたは存じておりません!
 だからあの日。或叶さんは秘書さんを置いて一人で来たの?

 谷崎専務と個人的な話をするために。

 ……待って。

 そもそも、写真を直接和希から見せられていたのだとすると、或叶さんは初めからキスマークの事も知っていたという事になる。

「あとは副社長が、機転をきかせて父を説得して、私にも訴えないで欲しいってお願いしてきたの。和希がどうこうって言うより、あなたを庇いたかったのね?」

「……私を?」

 私は瑞穂さんを見つめて、曖昧に首を傾げた。そんな私を見て、彼女は嫌らしい笑みを浮かべる。

「私はね、ただあなたの事が目障りだった。だから訴えと同時にあなたをクビにして貰うつもりだったのよ?」

「……そんな」

「だって。私が受けた精神的損害を、あなたは対価として何も払ってないじゃない?」

 ーーそれは。確かに、その通りだ。

 でも、知らなかった。

 和希に本命の彼女がいる事も、その彼女が専務のお嬢さんだという事も、何も……。
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