続・電話のあなたは存じておりません!
「最初から和希との結婚を破談にするつもりなんて無かったわ。
 父は優しいから私がこうと決めた事は大体許してくれるし、お腹の子もいるしね。
 それに今回の事で和希はこの先私に頭が上がらないだろうから、キツくお灸を据えるつもりだったのよ?」

 そんなので良いのかな、と思った。

 婚約者の不貞行為を知っていながら結婚するなんて……私に果たしてできるだろうか?

「私が言いたいのは、今後二度と和希に近づくなって事。話は以上よ?」

 サッと結論を述べて、彼女は立ち上がった。

 瑞穂さんを目で追い、「え、」とつい呟いてしまう。

「今後芹澤さんが何もしない限り、私はあなたを訴えないわ。勿論、クビもないし。
 来栖副社長とそう約束したからね?」

 それじゃあ、と言い残し、彼女は伝票を手にレジへと向かい、やがて店を後にした。

 カツカツとヒールを鳴らし、我が道を突き進む後ろ姿には独特の自信がみなぎっている。

 ーーなんて言うか。

 台風みたいな人だった。

 あの推しの強さが、きっと和希にとっては魅力的なのだろう。

 私は呆然と座ったまま、冷めていくコーヒーに手をつける事すらできなかった。


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