続・電話のあなたは存じておりません!
 悪びれる様子のない彼に、ガクッとうなだれる。

 わざわざ結婚式の前に殴らなくても、と思うのだが。

 彼はそういう条件の元で、谷崎専務に話をつけに行ったらしい。

 或叶さんは、私が受けた報いと同等の事をしたまでだと言って、少し意地悪そうな笑みを浮かべていた。

 それから淡々と日々は過ぎていき、六月二十日を迎えた。

「おめでとうございます」

 ホテルに入ったフレンチレストランで、カランとワイングラスを合わせた。

 彼は今夜、元々飲む予定だったらしく、帰りは運転手を呼ぶからと言ってお勧めのワインを頼んだ。

 誕生日ぐらいは飲みたいのだろうと理解して、私はクスッと微笑む。

 フレンチのコース料理が運ばれてくる最中に、前もって用意していたプレゼントを彼に渡した。

「あ。サングラス……?」

 或叶さんは嬉しそうに口角をあげ、箱から出したそれを恥ずかしそうに顔に着けてくれた。

「どうかな?」と言って、首を傾げる彼を見て、私は顔全体が熱くなるのを感じた。

 思わず鼻と口を手で覆う。

 ーーうわッ!!

 ごく控えめに言って、鼻血が出そうなほどカッコ良かった。似合うにしても程がある。

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