続・電話のあなたは存じておりません!
 面白がってからかうだけかと思っていたら、由佳たちは案外真面目にアドバイスをしてくれた。

 彼女たちがするテクというのも伝授して貰う。

 自宅の姿見を前にしながら、女性らしい振る舞いや、色気のある行動を練習するが、何となく照れてしまい本番では行動に移せない。

 やっぱり私から抱いて欲しいって言うべきなのかな?

 お風呂上がりにナイトブラを着けた自分の姿を見て、途端に羞恥心が湧き上がる。

 女の私から誘うなんて……なんだかがっついてそうで言えないよ。

 はー、と溜め息がもれる。

 付き合ってもう一カ月が経つのに、私たちの距離はなかなか縮まらない。

 相変わらず敬語で話してしまうし、呼び方も変わらず苗字呼び。

 世間の恋人たちがどうかは分からないけど、もうシててもおかしくはないはずだ。

 彼に抱かれたら、そこから何かが変わるような気がしていた。

 呼び方や話し方もフランクになって、グッと距離が縮まる気がした。今よりうんと親密になれると思った。

 彼が私に手を出さないのは、私に魅力が足りないからだろうか?

 下着の上から半袖のルームウェアを着て、私はドライヤーで長い髪を乾かした。
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