一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
自分でも驚くほどに甘い吐息だった。
乱暴に思えたのは最初だけ。ねっとりと優しく舌を絡ませられ、実花子も逃げる気を急速に失っていく。背筋がぞわぞわと波打つ甘い痺れに身を委ねる。ただ拓海にされるがままになっていた。
ひとしきりそうしてから、不意に唇が開放された。
頭がボーっとするのはワインのせいなのか、拓海のキスのせいなのか。濃厚な口づけの直後のため拓海の顔を見られない。
「早く俺を好きになれ」
拓海が呟きながら実花子の髪を撫でた。
それは随分な言い草だ。拓海は実花子を好きにはならないが、実花子には好きになれという。なんて自分本意で身勝手なのか。
今までの恋愛がそうだったのか知らないが、女なら今のキスで好きになるはずだと言われているようだった。
傷ついたように感じるのはどうしてだろう。
「絶対になりません」
結婚するなら、愛情に溢れた幸せな家庭を築きたい。一方通行の愛ではなく、愛し愛される関係。そしてそれは、相手が拓海では叶わない。
だから、絶対に好きにならない。拓海とは結婚しない。心に強く誓うのだった。