一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
外堀を埋められ、じわじわと近づく距離
翌日、実花子は出勤早々社内の様子がおかしいと気づいた。ロッカールームを出てしばらく歩いたその先に十数人の人垣ができていたのだ。それだけ人が集まっているというのに、騒がしいわけでもないのが不思議だった。
みんなで同じ方向を見て静観しているため、何事だろうと実花子もその輪のうしろにそっと加わる。
背伸びをして前に並んだ頭の隙間から覗くと、みんなが見つめるその先にいたのは拓海だった。正しく言えば、拓海と見知らぬ女性がひとり。目鼻立ちのハッキリとした、どこか色気の立ち上る美人だった。
歳は実花子と変わらない。髪の毛は同じように一本縛りをしているのに、なぜか同じヘアスタイルに思えないのは色香のせいなのか。モデルのようにスラッとしてメリハリのある体形はうらやましいほど。まるで、テレビからそのまま出てきた女優のようだった。
カッチリしたスーツでも堅苦しく見えないのは、春先にピッタリなパステルカラーだからなのか。色白の彼女にピッタリだ。
人垣に男性が多いのは、この彼女を見にきたからなのかもしれない。
その輪の前列にいたらしい千沙が実花子に気づき、「ちょっとごめんなさい」と言いながら人波をかき分けて出てきた。
「あの女性は?」