一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~


◇◇◇◇◇

内線電話が実花子に入ったのは、その後しばらくしてから。馴染みのない番号からの内線だなと思ったら、拓海からだった。

社外ならまだしも、社内で上役を無視するわけにはいかない。渋々席を立ち、できたてほやほやの拓海の部屋へ向かう。
ノックすると、中から「どうぞ」と女性の声が聞こえた。例の秘書だろう。

ドアを開けて入ると、拓海がデスクから立ち上がった。


菊池(きくち)さんに紹介しておこうと思ってね」


そう言って秘書を見る。彼女は菊池というらしい。首を傾けているのは、どうして実花子を呼びつけたのかと疑問に思っているからだろう。
実花子の隣に立った拓海は「こちらは、上原実花子さん」と紹介した。


「彼女とは、結婚を前提にお付き合いをさせていただいているんだ」
「……はい?」


彼女が眉間に皺を寄せる。仕えている社長からの突然の報告に驚いているようだ。
結婚前提ではなく別れ前提だといちいち注釈する必要もないだろうと、実花子は黙っていた。
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