一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「実花子、こちらは菊池真里亜さん。起業当時から秘書をしてもらってるんだ」
「上原実花子です」
頭を下げると、茫然としていた真里亜も「菊池真里亜です」と慌てて頭を下げた。
「社長、ご結婚されるんですか?」
真里亜にはまったく話していなかったらしい。ひとことずつ噛みしめるように尋ねる。心なしか、唇が少し震えているように見えた。
「近い将来に」
それがいったいどのくらい近いつもりなのか、実花子にはさっぱりわからないけれど。
その将来は実花子の野望によって潰える予定なのは、この場では自分の心だけにしまっておこうと口をつぐんだ。
「……そうですか」
「少しの間、席を外してもらえる?」
拓海の言葉にポカンとしたあと、真里亜は「はい」と小さく返事をする。部屋を去る間際、目こそ合わせなかったものの伏せがちに実花子へ向けられた視線がどこか気になった。