一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「よくわかんないけど、事件に巻き込まれたって」
そこまで言うと祐介はワーッと泣きだした。
転がるようにベッドから下りて、実花子はリビングのテレビへ足をもつれさせるようにして向かう。祐介がつけたままにしてあったテレビは、べつのニュースへ切り替わっていたため、リモコンを片手に忙しなくチャンネルを変える。
何度もボタンを押し直して、ようやく拓海を扱っているニュースに辿り着いた。
「……椎名拓海さんは自宅付近で胸を刃物のようなもので刺され、意識不明の重体です。今のところ通り魔による犯行との見方が濃厚です。では、次のニュースです……」
胸を刺された……? 拓海さんが? ……嘘でしょ。なにかの間違いだよね。だって、拓海さんがそんな事件に巻き込まれるわけがない。昨夜は遅くまでここにいたんだから。マンションの前でキスして、それから『おやすみ』って……。
実花子の手からリモコンが滑り落ちていく。
祐介は実花子のパジャマの裾を握りしめ、鼻を啜っていた。
同姓同名ではないか。きっとそうだろう。そうに違いない。