一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
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もしかしたら別人かもしれない。その可能性はまだ残されている。
拓海が電話に出られないのは、なにかべつの用事があったから。白鳥も同様に。
実花子は会社へ着くまでの間、悪いほうへ向かいそうになる想像をなんとかせき止めることに必死になる。
いつも絶えずにあった拓海の笑顔がなくなるなんて絶対にない。大丈夫。そう思わないと、どうにかなってしまいそうだった。
そうして着いた会社はどこかざわついた様子で、それはニュースの事件が同姓同名の人違いであってほしいと願う実花子の想いを打ち砕くには十分だった。
みんなの視線が実花子に注がれる。
「椎名社長、大丈夫なのか?」
「いったいなにがあったの?」
「上原さんは一緒じゃなかったの?」
あっという間に実花子の周りに人の輪ができ、次から次へと質問を浴びせられる。
電話は通じない、なんの連絡もこない。聞きたいのは実花子のほうだ。
「ねーねー、なんの騒ぎ?」