一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「え、ちょっと、実花子ちゃん!?」
千沙が慌ててハンカチを取り出す。
「まさか、亡くなったなんて言わないよね?」
遠慮なく借りたハンカチを目もとにあててうなずく。
「よかった。実花子ちゃんが泣きだすから……」
「ごめんね」
千沙を見て安心したのか、つい感情のコントロールが効かなくなった。
「意識不明の重体だって……」
口にするのも恐ろしい言葉だった。
『椎名拓海さんは自宅付近で胸を刃物のようなもので刺され、意識不明の重体です』
ニュース番組でアナウンサーが沈痛な面持ちで言っていた言葉がリフレインする。
「そっか……。でも、大丈夫だよ」