一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
怪しさ満点のお見合い相手
焦点の定まらない目と震える指先。時折襲う胃のムカつきをかろうじて交わしながら、上原実花子はやっとの思いで自宅のドアを開けた。
「只今帰還いたしました……」
瞼を閉じた状態で敬礼のポージングをしたが、ペッタンコのパンプスの足元がふらつく。ただいまと名乗りをあげたところで力尽き、玄関先のフローリングにバッタリとうつ伏せで倒れ込んだ。
桜はとっくに散り、昼間はポカポカ陽気の四月末。ひんやりとするフローリングは、熱くなった実花子の体に心地いい。
ふとスリッパの音が近づき、それを遠くで聞いているような不思議な感覚に身を委ねる。
「オイオイ、こんなところで寝るなって」
突如、呆れたような声が上から降ってきた。
「……ごはん……ちゃんと食べた?」
うつ伏せのせいか声が籠る。意識がはっきりとしないまま問いかけたが、「食べた」と間髪容れず答えを返された。