一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
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ランチから戻って席に着く。
不意に感じた視線に顔を上げると、社長室のガラス越しに拓海が実花子を手招きしていた。
最初に婚約者として紹介されたとはいえ、仕事中に公然とふたりきりになるのはやはり気が引ける。
幸いにも、ほとんどの人がまだランチで席を外したまま。拓海もそのタイミングを狙っていたのかもしれない。戻ってきている数人の視線を気にしつつ、そそくさと社長室へ入った。
素早くブラインドが下ろされると、周りの目が気にならなくなってホッとする。
「せっかく同じ社内にいるのに、なかなか実花子に触れられなくてストレスがたまる」
拓海は真顔でそう言うと、実花子を抱き寄せた。
じつは実花子も同じだ。なにをやるにも張りが出る半面、拓海の動向も気になる。どうしたって秘書の真里亜と共にする時間が多いだけに、モヤモヤとすることも多々。
でも、拓海も同じように思ってくれていると知っただけで、それは手に取るに値しないと思える。こうして拓海も実花子を想ってくれている。それだけで満たされた。
拓海の香りを胸いっぱいに吸い込む。