一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「今夜、時間取れる?」
実花子を引き離した拓海がそう尋ねる。
「祐介に夕食の準備をしたあとなら」
今朝は時間がなくて、晩御飯の用意にまで手が回らなかった。時間がなかったのも、拓海のことを考えてなかなか寝つけなかったせいだというのは、彼には内緒だ。
「それじゃ午後七時頃に。この前行ったセレンディピティって覚えてる?」
「はい」
「そこで待ち合わせよう」
実花子がうなずくと、真里亜がお昼から戻ってきた。
慌てて拓海から離れる。
「――失礼いたしました」
一緒にいる実花子たちを見て、即座に退室しようとした彼女を拓海が引き留める。
「出て行く必要はないよ」
真里亜はうつむき加減で足を止めた。そして、その横をすり抜けていく実花子を見ようともしなかった。