一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
気を取りなおして聞き返す。
「まだなんとも言えないけど、多分大丈夫かな」
「なにがあったんですか?」
「ちょっとしたことだよ」
実花子に話して聞かせても仕方ない。どうせ仕事のことなんかわからないんだから。
そんなニュアンスに聞こえたのは、真理亜がずっと一緒だったとわかっているせいだろう。それが心のどこかに引っかかるのだ。
持ちなおそうとしていた気持ちが挫かれる。
実花子だけ仲間外れ。一番そばにいて理解したいのに、その権利を与えてもらえないとどうしても感じてしまう。
それならここにいても仕方がないのではないか。
つまらない嫉妬だ。
「私、帰ります」
「え? 帰るってなんで」
バッグを持って玄関へ向かおうとした実花子の手を拓海が掴む。
「拓海さん、疲れているみたいですから。私、いないほうがいいですよね」
違う。こんなの自分じゃない。なんでこんなに面倒臭い女になっているのだろう。
拓海の全部を受け止めて包容力のある女でいたいのに。拓海を好きになってから、実花子はずっとこうだ。相応しい女からどんどん遠ざかっていく。
好きという気持ちが邪魔して、いろんなものが歪んでいく。そうなりたくないと思っているのに、それを止める術がわからなくて、どんどん深みにはまる。
拓海と結ばれて幸せなはずが、簡単に心をむしばまれていく。たぶんそれは、拓海とのつり合いを考えるせいだろう。実花子も相当屈折した女だ。
彼の手を振り解き、実花子は部屋を出た。