一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「ありません。大里さんにはなにも。この傷も、逃げようとして私が勝手に転んだだけなんです」
首を横に振りながら拓海に訴えかけた。大里は、そこまで悪い人ではない。
「実花子ちゃん、大変だったね」
拓海に気を取られて気づかなかったが、白鳥もここへ駆けつけていた。
「大丈夫かい?」
「はい、ご迷惑をお掛けしました」
頭を下げる。
「でも、どうしてここが」
「メールだよ。俺は送っていない」
「えっ……それじゃ、あれは……?」
社内メールだから、送られる人は限られる。
――まさか。
咄嗟に頭に思い浮かんだのは、社内で最も拓海に近い人物だった。
実花子の表情で読み取ったのか、拓海が沈んだ表情でうなずく。真里亜だ。