一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
別れはある日突然に
「もう! 実花子ちゃんってば、いい加減にしてよ!」
実花子の部屋を訪れた千沙は、ドアを開けるなり眉間に皺をたっぷり寄せて詰め寄った。事件のあった翌日の土曜日の夜のことだった。
ニュースにもならなかったのに、どこからか聞きつけてやって来たらしい。
「心臓がいくつあっても足りないじゃない! だから言ったでしょう? 巻き込まれるんじゃないかって。もう、私やだ」
千沙は突然ポロポロと涙をこぼしはじめた。
「ごめんね、千沙」
感極まって泣いてしまうほど心配してくれたのだ。申し訳ないのとうれしいのとで、実花子まで目が潤む。
「なにやってんだよ、ふたりしてこんなところで」
そんな様子を遠巻きに見ていた祐介は、バナナをかじりながら冷めた目つきで見た。
そういう祐介も、拓海から話を聞いたときには涙目になっていたけれど。これでも姉思いの弟なのだ。