一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「とにかく上がって」
千沙を招き入れ、実花子はコーヒーを出そうとキッチンへ立った。
「祐介くんも大変ね、こんなお姉さんを持って」
千沙が涙を拭いながらダイニングテーブルへ腰かける。
どんな姉だと言いたいのか。実花子からすすんで事件に飛び込んだわけではない。
「ほんとだよ。こんなに手のかかるねえちゃん、早いところ椎名さんにもらってもらわないと困る」
その言い方では、まるで実花子は厄介者扱いだ。
「ほんと、祐介くんの苦労を察するわ」
なんだというのだ、このふたりは。苦労したねという労いの言葉を掛けるなら、実花子にではないのか。幼い祐介を親に代わって育ててきたのは実花子だ。
単なるジョークの飛ばし合いだとわかっていながら、実花子はつい唇が尖る。
出したコーヒーをひと口飲むなり、千沙は「苦いっ」と顔をしかめた。