一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~

捨て身の覚悟だったのかもしれない。これでダメなら、それまでだというような。
たとえあの場で拓海が条件を飲んだとしても、約束どおりに実花子が解放されたときに拓海が素直にそのまま従っているとは思えない。その場限りの嘘で丸め込まれる可能性のほうが大きいのだから。


「訴訟の件はどうなるんだろう」
「結局は、トレンダーズクリエイトが肩代わりするというか、元々原告だから、そのままになっちゃうみたい。M&Aの契約には、そういった問題が起きた時の賠償は大里さんの会社が負うってなっていたらしいんだけど、支払い能力がないから」


結局、M&A解消は見送ったという話だ。つまり、大里の願ったとおりの結果になった。
大里にとっての誤算はひとつ。自分が警察に身柄を拘束されてしまったこと。


「ねぇ、実花子ちゃん……」


千沙がそこでいったん言葉を区切る。なにか言いにくいことでもあるように、急に口が重くなったみたいだ。


「どうしたの?」
「椎名社長との関係は、これからも変わらず?」
「……え? うん」
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