一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「これは私が勝手に転んだだけなの」
大里には実花子を傷つけようという気はまったくなかった。あの時は、実花子を引き留めようとしてたまたまこうなっただけ。命を奪ったり、刃物で傷つけたりする人ではなかった。
でも、そう説明しても、千沙の心にはまったく響かないようだ。千沙は、厳しい顔と心配顔が入り混じった複雑な表情で実花子を見つめた。
だからといって、「はい、別れます」と言うつもりはないけれど。
「それじゃ、約束して」
「なにを?」
「今度危険な目に遭ったら、その時は椎名社長と別れるって」
「なにそれ」
思わず笑い飛ばす。そんな妥協案は飲めないが、変わらず真面目顔の千沙に、それ以上首を横に振れなくなった。それだけ実花子を心配しているのだ。
そう考えたら、ここで拓海を取るとは言いづらい。
「……わかった」
「本当に?」
確認を取られて、ひとまずうなずく。
すると千沙は気を良くしたのか、やっといつもの可愛らしい笑顔を浮かべた。